本と映画とあさひかわ

書評・映画評Blogにしようと目論んでいましたが、うっかり『バーフバリ』からインド映画にハマリ、その後NetflixとAmazon Prime含め映画をたくさん見るようになりました。ありがとうバーフバリ。

8. 仕事と人生、色々あっていいんじゃない? ー『老人ホームに恋してる。』

NetGalleyに登録したっきりレビューを(このブログでは)全くしていなかったので、同サービスを利用したブックレビューはこれが1冊目ということに!

 

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 高校卒業後介護施設に勤め始めた筆者。優しいタッチのエッセイ漫画と、生真面目な文体の随筆が交互に折り重なる構成で、どちらも長くないのでサクサク読めます。体力仕事で大変そうだな...というイメージがあったし、(実際夜勤なども含めて大変なのだろうけど、)入居者それぞれとの人間同士の交流に焦点をあてた書きぶりで、改めて人は死ぬまで人でいたいし、社会的存在なんだなと思う。
 私にとってこの本が面白いのは、筆者が自分も悩み多い若者であるということで、単にお仕事漫画としてではなく、入居者の人に相談に乗ってもらい自分の生活のあれこれをなんとかこなしていく筆者の姿にどこか懐かしい思いも感じるからかもしれない。私の場合は大学に入って出会ったコミュニティがその役割を果たしてくれたけど、自分に合えばコミュニティがどこでその構成員がどういう属性かはあまり関係がないということなのだろう。
 この高齢社会の日本で、ほとんど誰もが家族や親類のだれかが老人ホームに入居しているという状況だろう。それぞれの事情によってどれくらいの頻度で入居しているホームを訪問できるかも違うけれど、ホームで働く人の負担も考えつつプロを信頼して任せられるといいなあ。COVID-19の影響でいま私の祖母のいる施設も不要不急の面会はできなくなっているのだけれど、施設内に友達の少なそうな祖母が職員さんに不平を言っていないかが少し心配だ。こんなときにスマホでも持っていてくれるといいんだけど...。(と、最後はやっぱり最近の心配にひきつけて終わってしまう。) 

 

関連記事

・What the Japanese can teach us about super-aging gracefully- BBC 2020/3/30

www.bbc.com

 100歳を超えてなお活躍する元気な日本のお年寄りを紹介しつつ、超高齢化社会に既に突入した日本社会で生きる高齢者がなぜこれほど生き生きと活動できるのかを考察している。高齢者人口が莫大なために若い世代に頼らずに自分たちの世代で社会生活を作り上げられることがプラス要因になっているのでは、という指摘は興味深い。

 

・Japan is aging faster than we think- East Asia Forum 2019/10/17

www.eastasiaforum.org

 

 

『老人ホームに恋してる。』(Kindle)
大塚紗瑛 著
2019年 祥伝社